俳優の緒方拳さんが亡くなってから、追悼番組が続いている。
先日は「魚影の群れ」を観て、今日は録画していた「破獄」を観た。
どちらも私が読み続けている吉村昭氏の小説が原作である。
「魚影の群れ」(1983年)は、緒方さんの他に夏目雅子さん佐藤浩市さんが
出ているので以前に数回観ていた。
青森の大間でのマグロの一本釣りに命を賭ける漁師の人生ドラマだが
マグロを釣り上げる格闘場面は大変な撮影だったろうと想像できるほど
リアルだ。
ただ、緒方さん演じる父親役や娘婿の佐藤さんの方言に比べ、夏目雅子
さんの方言のアクセントが大げさ過ぎて耳についたのが残念。
吉村氏の原作の「破獄」は、昭和11年から23年までの間に、犯罪史上
未曽有の4度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎と刑務官の闘いを
時代背景とともに詳細に描きだされている。
1985年のNHKドラマで、この佐久間を緒方さんが演じているのを今回
初めて知り、興味深く観た。
佐久間を追いつつ奇妙な情を持つ刑務官を演じるのが津川雅彦さん。
緒方さんの気迫に満ちた演技は鳥肌ものだ。
原作を読んでいるので二時間に満たないドラマでは内容の充実感は無いが、
お二人の存在感でカバーできていたように思える。
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吉村氏の作品つながりで・・。
昨日、ようやく「生麦事件」(上・下巻)を読み終えた。
それほど長い小説でもないのに、時間がかかったのは吉村氏の2年間の緻密な
資料調査により描きだされた内容を読みこなす力が私に足りない為と思われる^^;
事件の発端の1862年から1868年までのわずか6年の間に江戸時代から明治
へと日本は一変する。
その激動の時代、生麦事件から薩英戦争が起こり、それに続く外国連合軍と
長州藩の戦争、蛤御門の変、鳥羽伏見の戦争など、それぞれの背景や被害の
状況の仔細さなどが記述されているので、なかなか読み流すことができない。
吉村氏ご本人があとがきに「筆をおいた時には甚だしい疲労おぼえた」と記すほど
大変な作業だったようだ。
多分、この作品も再度読み返すことになるだろう。